『三國志』(中華書局版)


 中華書局本『三國志』表紙『三國志』巻一 武帝本紀

図は 中華書局本『三國志』表紙 及び 「巻一  魏書一 武帝本紀」冒頭部分


 正史『三國志』の作者は御存じ陳壽、本書の成立は三世紀末頃だとされています。

 『三國志』の原文としては、今最も入手しやすい物です。中国大陸書取扱店なら、大抵どこでも売っています。値段は書店毎に異なる「元←→円」のレートによりますが、大体\3000〜\5000位だと思います。

 この本は序文に因れば、「百納本」「武英殿本」「金陵活字本」「江南書局本」をベースにそれぞれを比較検討して、よりよい本文を作成し、それに標点(句読点や、人名、地名に線を付す)を付けた物です。校勘した文字は括弧で元の字を併記してあります。

 末尾に『華陽國志』(古代〜東晉までの蜀の歴史を記した、現存最古の地方誌)・『晉書』の陳壽伝・『宋書』裴松之伝が付いているのもお得な点でしょう。

 また、この本専用の人名・地名索引も中華書局から出ていますが(1980発行)、現在は絶版なので、古本で見かけたら即買いです。但し「四角号馬」という、日本人には余りおなじみでない検索方法を使っていますので、慣れが必要です。

 内容や成立の経緯については、ちくま学芸文庫『正史 三國志1』(1992)の今鷹真氏の解説が詳しいので、そちらを御覧ください。

 三国フリークを自称するなら、やはり本書は必須のアイテムでしょう。ちくまの訳本も良くできていますが、やはり原文を読むことによって、訳者のフィルターがかかっていない、元々のイメージをつかむことが出来ます。

 非常に良くできた版本ですが、時々誤記や、標点の間違いも見受けられます(往々にして、句点の打ち方は、研究者によって異なってきますし、当時はそれが正しかったのだが、後の研究で誤りだと判ったものもあります。これは中華書局版正史の全体について言えることなので、それなりに注意が必要です。)。

 裴松之の注を、従来は割り注の形であったのを、段落の後に一括して付しているので、時と場合によっては、頁を前後する必要があるため、反って見難かったりもします。まあ、この辺りはしょうがないんですが・・・


注釈書について

『三國志集解』序文 『三國志』自体の注釈書は、数多く書かれています。裴松之の注ももちろんその一つであり、これは正史の注の模範的な物だとされています。

 その後に書かれたもので、その中の白眉であり、最も入手しやすいのは民国・廬弼の記した『三國志集解』でしょう(写真参照)。これは台湾・藝文印書館から影印版が出ています。 内容は豊富で、解説も要を得ていますので、手元にあると何かと便利です。

 しかし、これの最大の欠点? は、本文が「白文(返り点も送りがなもない! 句読点すらもない) 」で書かれている点でしょうか。そのため、中華書局本と見比べながら読む必要が出てきます。また、割り注なので、本文を探すのにも一苦労します。

 ですから、「『三國志』の原文を持つなら、中華書局本をまず買ってください。もう一冊より詳しい本が欲しければ、『三國志集解』をお奨めします。」と書いておきます。


 索引や、地図などの紹介は、工具書のコーナーにて行います。

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