工具書のコーナー


 このコーナーでは、中国史を学習する際に私たちの手助けをしてくれる、便利な小道具とも言うべき工具書の類を紹介します。

 私が手元に持っていたり、学校で使ったりしている物が主です。


『大漢和辞典』

『大漢和辞典』

御存じ、大修館書店発行の『大漢和辞典』。日本の誇る漢和辞典です。

膨大な親字&語彙は、近年中国側で『漢語大詞典』『漢語大字典』が出るまで、世界最大を誇っていました。先達の偉業として頭が下がる思いがします。

しかし、その内容を鵜呑みにしてはいけません。引用の間違い(注釈を本文として記す等)も間々あります。
語句の説明も、時々引用文を訓読しただけというお粗末な場合もあります。
また、これは仕方のないことですが、研究の進展に伴い、語句の解釈が変わってしまったところもあります。

さすがに儒学の主書物たる経書の引用に関しては、それなりにしっかりしていますので、私のような先秦時期をやる人間にとって、いまだに便利な事このうえないです。

語彙索引も出ています。これが無いと『大漢和辞典』は非常に引きにくいので、是非揃えましょう。

昔、台湾から海賊版が出ていました。これには、「毛沢東」と「ケ少平」の項目の中身を削除しているという、楽しい特徴がありました。

お値段:約20万(修訂版) 古本で縮印版が6〜7万(但し初版本)

『アジア歴史辞典』 アジア史に関する百科事典です。非常に便利な辞典ですが、1970年の出版と古く、とっくに絶版になっていますので、古本屋で購入するほか手がありません。

※最近、百科事典をCD-ROM化するのがはやっているのだから、『アジア歴史辞典』もCD-ROMに焼いて欲しいと節に願っております。>平凡社様

お値段:古本で10万円前後

『漢語大詞典』 中国が『大漢和辞典』に対抗して作ったのかどうか知りませんが、国のメンツをあからさまに出したような漢語辞典です。用例は『大漢和辞典』を凌ぎ、世界最大を誇ります。『大漢和辞典』より便利な事も多いので、大学で中国史をやる人間なら、当然『大漢和辞典』以外に、これも引くべきでしょう。

ただ、外国人である我々にとって問題点もあります。
古典漢語を用例で扱うのにも拘わらず、「簡体字」でそれを記すという点は、つらいですね。
それと用例に『人民日報』を使ってくるのには参りました・・・
索引もありますが、お世辞にも使いやすいとは言えません。

お値段:7〜8万円

『漢語大字典』 単字を調べるならばこれがお奨めです。私はもっぱら訓の付け方を考えたり、異体字を確認する場合に使います。

お値段:8冊本 2万円  1冊本 1万円

白川三部作

『字通』

写真は『字通』

日本が誇る漢字学者、白川靜氏の精力の結晶! 『字統』『字訓』『字通』の三部作です。

氏のファンを中心に人気がありますが、『字通』の序文でも書いてあるように、漢文を読むのにはあまり適していません。『字通』だけではなく、『新字源』等の他の辞書も持っていた方が良いかもしれません。

しかし、読んでいて「おもしろい! 」と思った辞書は『字通』が初めてです。あくまで、その語句の原初的な「意味」を追求するのが理由だと思います(そのため、語句の出典や用例を調べる場合に役に立たない)。いきなり金文を引かれておしまい! と言うのには、しばらく唖然としました。

私は。この中で『字統』を一番よく使います。字源を調べるのに一番手軽で便利だというのが理由です(氏には『説文新義』という大部の書物も別にありますが、手元に持っていませんし、一冊本の便利さには代え難いですね。)。

『金文通釈』も続き? を書き始めるそうなので、楽しみにしています。

『中国歴史地図集』

中国歴史地図集

題名の通り「歴史地図集」です。『三國志』の訳本が出た当初にはまだ出版されていませんでした。
非常に便利な地図集であり、また中国歴史地理学の現在の学問水準を反映していますので、それなりに安心して使うことが出来ます。(実際作り始めたのは文革の後期だそうだが・・・ この辺りの事情は楊寛の自伝に詳しく書いてあります。)。

全部で8冊有りますが、必要なところだけ買えばいいでしょう(例えば、三国関連部分は「3(後漢)・4(三国)冊」に分かれています。)。

大陸から簡体字版・香港から繁体字版が出ていますが、是非繁体字版を買いましょう。簡体字版は文献の文字とリンクしていませんので、引きにくいです。

お値段:繁体字・簡体字とも 1冊 3000円前後

『中国史籍解題辞典』

『中国史籍解題辞典』

中国の古典籍について改題(著者や内容の説明。成立の事情やどのテキストを使うと良いか等、について書いてあります。)をした本です。色々な書物について書いてありますので、ネタ本として一冊持っておくと非常に便利です。

燎原書店の出版ですが、他の書店でも取り扱っています。

お値段:\12000

『新編 東洋史辞典』

東洋史辞典

一冊本なのでコンパクトであり、且つ、現在までの所一番新しい東洋史関連の辞典です。巻末に系図や官職表も載っていますので、ちょっとした調べ物には重宝します。

コンパクトに纏めてありますので、つっこんだ解説となると少し弱いです(例えば「大夫」の項では、春秋の卿大夫の「大夫」と、士大夫の「大夫」を一緒に扱っているので、中途半端な解説になっています。)が、まあこれなどは例外ですし、おおむね当を得た解説をしていると思います。

お値段\9000