Google Earthで中国史

『通典』州郡典kmlデータ

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ここでは、杜祐の撰になる『通典』(貞元十九年上進)州郡典の郡についてプレイスマークを作成したkmlデータについて解説します。

このページに掲載するkmlデータの閲覧には、Google Earthが必要となります。必要に応じて(できれば最新版を)各自インストールしてください。

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『通典』州郡典解題

『通典』(以下、本書)は唐の杜祐(開元二十三(713)~元和七(802))の撰による、上古以来唐の天寶年間(742~756)に至るまでの、現在の中華人民共和国を主要な支配域とする歴代王朝について、その各種制度を通史的に記述することを試みた書物であり、本書のスタイルに則って編纂された九通・十通と総称される書物群の筆頭を占めています。

本書は、制度を通史的に記述するスタイルを始めたこと自体にも価値がありますが、杜祐と同時代である唐代の制度を豊富に引用しており、唐の同時代資料として、その制度を考える上で欠かすことのできないものとなってます。

ここでは、行政区(「行政区」の定義を「中央政府が、その支配域を複数に分割して設定した行政単位」とする)情報を記した州郡典の情報を利用し、Google Earth上にプレイスマークを設定したものを更改しています。

州郡典は、上古~唐までの行政区の状況を概略的に記し、その後に唐の行政区について個別に記しています。唐の行政区については、天寶年間(742~756年)の状態を基準に編纂されていますが、それ以降の情報も含むものもあります(地理関係の情報は、概ね天寶初め頃の状態)。

上述のように、本書は唐代に撰述されたものであり、上古~唐代に至る行政区の変遷、及び唐代の行政区に関する認識を反映したものとして価値が高いものとなっています。但し、唐王朝自体の行政区の変遷(設置・廃止など)に関しては、殆ど記されていないという問題もあります。

また、『舊唐書』『新唐書』地理志や『元和郡縣圖志』など、他の唐代に関する地理書が全国を区分する最上位の階層として「道」を挙げるのに対し、『通典』のみ『尚書』禹貢の九州+南越の区分を採用する点が特徴となっています。これは、杜祐が想定した本書の読者層にとって、天下の大区分としては経書である『尚書』禹貢篇の「九州」が第一に想起される概念であり、通史的な視点を持つ本書の性質からして大項目として設定するに相応しいものであると判断したと推測されます。

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プレイスマーク一覧

『通典』州郡典kmlデータ
禹貢九州(+南海)名ファイル名
古雍州tondian01.kml
古梁州tondian02.kml
古荊河州tondian03.kml
古冀州tondian04.kml
古兗州tondian05.kml
古青州tondian06.kml
古徐州tondian07.kml
古揚州tondian08.kml
古荊州tondian09.kml
古南越tondian10.kml

※禹貢では古豫州。代宗の諱「豫」を避けて「荊河」と表記。

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使い方

  1. 上記kmlファイルをクリックします。
  2. Google Earthが起動し、kmlファイルを展開します。
  3. ここでは、古雍州(tondian01.kml)を開いてみました。
  4. 中華人民共和国行政区画kmlデータと異なり、高度に応じたプレイスマーク表示の切り替えは設定していません。これは、プレイスマークの集合体の形で、閲覧者に擬似的な面的情報を持たせることを企図したためです。
    プレイスマークを表示
  5. 通常状態では、プレイスマークの名称を非表示にしてあります。これは、プレイスマークの数が多いので、文字が表示されると可読性が損なわれてしまうと判断したためです。
  6. 但し、プレイスマークの上にカーソルを合わせると、プレイスマーク名が表示されるようにしてありますので、行政区名の確認は可能です。
    プレイスマーク名を表示
  7. 各プレイスマークをクリックすると、バルーンが表示されます。
    バルーンを表示
  8. バルーンの内容は、下記SchemaData要素を参照して下さい。

  9. 全てのファイルを同時に表示してみました。各ファイル毎にプレスマークの色を変えてあります。これも、プレイスマークの集合体で、禹貢九州(+南越)の擬似的な面的情報を表示することを企図したためです。
    全部のデータを表示

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プレイスマークの設定基準

本kmlデータは、唐代行政区を対象にプレイスマークを作成したものです。

プレイスマークポイントは、行政区治所を対象としました。

但し、唐代行政区治所の所在地が文献・考古的調査により推定可能なものは極少数です。

そこで、本データでは、唐代行政区プレイスマーク設定の原則として、以下の基準を設定しました。また、上述の現在の行政区画との対応関係は、このプレイスマークが含まれる現在の行政区画を挙げたものです。

  1. 唐代行政区治所の所在地が文献・考古的調査により推定可能な場合はそこを対象としました。
  2. 唐代行政区治所の確実な所在地は不明なものの、治所が存在したであろう故城跡が文献・考古的調査により推定可能な場合はそこを対象としました。
  3. 上記二種類の方法が適応不可能な場合は、(その管轄内に)唐代行政区治所が存在したと推定される現在行政区画治所付近に便宜的にプレイスマークを設定しました。

この3方法の内、より望ましい情報は1, 2になります。

しかし、実際には、それらの情報が得られない行政区の場合(唐代行政区治所を想定可能な材料が存在しない場合)も多いため、その場合のポイント設定手段として、2の方法、すなわち現在の行政区画の治所付近にポイントを設定することにしました。

無論、現在の行政区画治所の位置と、唐代行政区治所の位置が完全に一致する可能性は決して高くはありません。しかし、多くの唐代行政区の治所の所在地が、現在の行政区画の中心地域(旧城内、もしくはその近郊)と重なり合う可能性は存外高いと考えられます。それらの事実を踏まえて[当たらずとも遠からず]の関係として、現在の行政区治所付近にポイントを設定することにしました。

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プレイスマークの凡例

情報の抽出やモデル化の手法については、下記参考資料を参照してください。

本kmlデータは、山田が京都大学人文科学研究所21世紀COE研究員時代に進めていたプロジェクトで蓄積していた情報の一部を利用して作成したものです。

ExtendedData要素の子要素であるSchemaData要素の説明

DivisionsName
行政区の名称(原則として郡名)
SubName
行政区の名称(原則として州名)
OtherNames
その他の名称(『通典』州郡典で「或…」と各行政区の末尾に記される名称)
DivisionsCode
行政区コード(データ管理用に独自に付けたもの)
Class
禹貢九州・州(郡)・縣の何れか
HighClass
『通典』の記述構造上で上位に位置する行政区名
HighClassCode
上位行政区のコード番号(未実装)
RulePlace
行政区治所所在地を下位行政区名で表記
RulePlaceCode
行政区治所所在地のコード番号(未実装)
PresentPlaceCountry
国名各行政区が、現在のどの国・行政区画に治所が存在したかを表記。
PresentPlaceCountryは国名を表記
PresentPlaceClass1
第一級行政区画名
PresentPlaceClass2
第二級行政区画名
PresentPlaceClass3
第三級行政区画名
PresentPlaceClass4
第四一級行政区画名

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参考資料

本kmlデータは、山田が2006年度~2007年度に在籍した京都大学人文科学研究所付属漢字情報研究センター(21世紀COE研究員として在籍)時代に進めていた、唐代知識ベースプロジェクトで蓄積していた地理関係データを元に作成しています。

上記プロジェクトの遂行に当たっては、人文科学研究所のT・Y両先生、当時同僚だったS・Y両氏、また実際のデータ入力をしていただいたU・H・O氏の協力をいただいています。また、嘗て当該プロジェクトの研究員でもあったA氏には多くのアドバイスをいただきました。

但し、本データは、山田一人の責任にかかるものです。一切の質問・苦情などは、山田まで連絡をして下さい。

上記プロジェクトの成果物です。本kmlデータは、これらを執筆する際に作成した情報に基づいて、プレイスマーク・ライン・ポリゴンを記述しています。

「唐代行政地理のデータモデル」(牛根靖裕・白須裕之との共著・共同報告)
論文:情報処理学会研究報告/人文科学とコンピュータ研究会報告 CH73,57-64,20070127(ISSN 09196072)(情報処理学会/社団法人情報処理学会)
口頭発表:2007年1月27日 於:総合研究大学院大学
「唐代行政地理の概念モデル」(牛根靖裕・白須裕之との共著・共同報告)
論文:情報処理学会研究報告/人文科学とコンピュータ研究会報告 CH73,49-56,20070127(ISSN 09196072)(情報処理学会/社団法人情報処理学会)
口頭発表:2007年1月27日 於:総合研究大学院大学
「曖昧な「唐代」概念」(牛根靖裕との共著・共同報告)
論文:東洋学へのコンピュータ利用 第18回研究セミナー(2007)
口頭発表:2007年3月22日 於:京都大学学術情報メディアセンター北館
「唐代の行政地理」に関する「史料」問題」(牛根靖裕・白須裕之との共著・共同報告)
論文:東洋学へのコンピュータ利用 第18回研究セミナー(2007)
口頭発表:2007年3月22日 於:京都大学学術情報メディアセンター北館
「複数文献を対象とする唐代行政地理情報の統合化」(牛根靖裕・白須裕之との共著・共同報告)
論文:情報処理学会研究報告/人文科学とコンピュータ研究会報告CH75,39-46,20070727(ISSN 09196072)(情報処理学会/社団法人情報処理学会)
口頭発表:2007年7月27日 於:神奈川工科大学
「唐代資料引用のための語彙設計―書籍と版本とを対象として―」(牛根靖裕・白須裕之との共著・共同報告)
論文:情報処理学会研究報告/人文科学とコンピュータ研究会報告CH76,17-24,20070927(ISSN 09196072)(情報処理学会/社団法人情報処理学会)
口頭発表:2007年9月27日 於:東南科技大学(台湾・台北)
「唐代行政地理の地図情報について」(牛根靖裕・白須裕之との共著・共同報告)
人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2007)報告書
口頭発表:2007年12月14日 於:京大会館

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