今回採り上げた本郷和人氏は、東京大学の史料編纂所の方です。奥様の本郷恵子氏も同業&同職場とのことですが、一体、家庭でどんな書庫スペースの取り合いをしているのか気になるところです(一人だけでも肩身が狭い身なので……)。
で、夏休みにつらつら読む本を図書館で借りてくるのが、いつもの習慣なのですが、さとうしんさんのBlogで紹介されていた本郷氏の本が気になって借りてきた次第です。
本書は、日本中世史(鎌倉幕府~信長)までを人物をターゲットとして採り上げた本です。この本自体のレビューは、もうあっちこっちに挙がっているので、ここであれこれ言うまでもないですが、個人的にツボったは、実は、「はじめに」の中の項目「なぜ日本史は人気がないのか」です。
これ、「東洋史」「中国史」に置き換えても一緒だよな~と。
この辺りは、常日頃お取りつぶしの声が聞こえてくる人文系共通の悩みかも知れません。受験生やら在学生から受験料や学費をいただいて(後は公的補助ですね)、そこからお給金をいただいている&非常勤という不安定な身としては、やっぱり自分の講義やらなんやらで、学生を集められるに越したことは無いわけです(多すぎても大変ですけど……)。
本書では、小谷野敦『バカのための読書術』(筑摩書房、2001年)が挙げている、歴史の書き方についての二つのタイプ「人物史」「民衆史」を切り口に、人物史を対象にした本書のスタンスについて、以下の三つの原則を披瀝します。
- 彼自身が環境をどう解釈し、その上でどの様に考え行動したか。
- 彼の周囲の人々が環境をどう解釈し、彼の行動をどう判断するか。
- 現在の私たちが、当時の環境をどう解釈し、彼の行動をどう判断するか。
そして、この「いわば三層からなる観察と分析は、一つとして欠くことができない」と結びます。
更にもう一点、氏が重要視するのが「分析は実証主義でなくてはならない」という点です。氏が述べるように、この辺りが人文学の中での史学と文学とのスタンスの違いにつながります。
昔、大学に入ったときに、もう亡くなられた恩師から「ここまでしか書けないと線を引いてそこで止まるのが史学、そこから一歩踏み込むのが文学」と習った記憶があります。この場合の文学とは、歴史物語的な意味合いが強いのですが、だからこそ「学術的な歴史はつまらない」と言われるんでしょうねえ。
専門書や論文はその辺りのことを切り捨てて書いているわけですから、つまらなくて当然ですけど、やっぱり一般向け書籍としては、その辺りをどう掴むか、という視点も大事です。で、自分は将来この分野を志す中高生に、魅力的なテイストを出せているか??? 悩み所です。
その他、教科書に載っていないけど、その業界では有名人を中心に採り上げているので、ざーっと読むだけでも楽しいです。
個人的には、法然というか、鎌倉仏教が何故新しいのか、というニュアンスが、東大寺の宗性さんのあれっぷりとか……と比較する過程で、あ~なるほど~、と納得しました。
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人物を読む 日本中世史―頼朝から信長へ (講談社選書メチエ) 発売:講談社 2006-05-11 |
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