中古音の平仄と普通話の四声

例年通り、祇園祭山鉾巡行が過ぎると共に梅雨も明け、夏本番となって参りました。

しかし、暑い。

さて今回は、以前紹介した『唐代の人は漢詩をどう詠んだか』からのネタです。

唐代頃の発音を中古音と呼びます。

で、中古音のアクセントには、「平声(ひょうしょう)」「上声(じょうしょう)」「去声(きょしょう)」「入声(にっしょう)」の四種類あります。特殊な読み方ですが、これが習わしになっています。

このうち、復元音の末尾が-p, -t, -kとなるのが「入声」です。入声を区別するのに、俗に旧仮名遣いで「フツチクキ」と末尾がなるものは入声だという覚え方があります。

上記『唐 代の人は漢詩をどう詠んだか』の説明によると、「-p→フ」「-t→ツ・チ」「-k→ク・キ」にそれぞれ相当するそうです。

また、平声以外の上去入の三つを仄声(そくしょう)と呼びます。

しかし、上記書では、入声以外の平上去三声の具体的なアクセントの様相(調値)は、よく分からないとしてます(p.162)。それでもこの本は、復元音で唐詩を読む! がコンセプトなので、平山久雄氏の復元アクセントを利用して、復元しています。

ちなみに、現代の中華人民共和国の標準語(普通話)にも、四種類のアクセントがあります。こちらは「一声(いっせい)」「二声(にせい)」「三声(さんせい)」「四声(よんせい)」です。まあ、これは、中国語(普通話)を学習する際に、第一に習う事項でしょう。

  1. 妈(mā)
  2. 蟆(má)
  3. 马(mǎ)
  4. 骂(mà)

とまあ、こんな感じになります。

じゃあ、中古音と、普通話のアクセントは、どういう関係があるのか? という疑問が出てきます。

昔、どなたからか伺ったのは、「平声が一声(陰平声)と二声(陽平声)」「上声が三声」「去声が四声」で、入声、という事でした。でも上記の本では、そう簡単ではないとしています。

音韻の専門家ではない私にとっては、非常に難しい話ですが、避けて通るわけにも行かないので、メモがてら書いているという訳です。

で、おまけにもう一つ。

中公新書の阿辻哲次『近くて遠い中国語』p.182に「関西弁には四声がある」という項目があります。「目(めぇ)」「て(てぇ)」は二声、「歯(はぁ)」は四声だ~、というわけです。まあ、これは、方言ならばなんとなく他にも類例がありそうですが。

しかし、中古音導入期の遣唐使やその後の入唐僧が導入した漢字音は、京言葉や延暦寺・高野山辺りのお経の読音として残されているそうです。また、それ以前の南朝江南系の発音は、奈良の古いお寺に残されているそうですが、こちらは近年急速にそれが失われつつあるとのこと。なんか勿体ないですね。

ちなみに、宇治の萬福寺は、明末の隠元禅師の開山なので、中では明代の福建音がベースとなった読音が使われています。

山田 崇仁 の紹介

あちこちの大学で講師をやっている中国史研究者です。 常時お仕事(専任・非常勤・原稿・講演など)募集中です。
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